堀部太建築設計事務所さま


堀部

嶋さんの中学の同級生から設計の依頼が来て工事をすることになった時に、帯広で工務店をやっている同級生のところに頼めないか、という話になったことがきっかけでした。

堀部さんの設計した物件と、私が施工した物件がたまたま同じ雑誌で紹介されていて。十勝の札内で家を建てようとしていました。

堀部

なんででしょうね(笑)それこそ雑誌で紹介されていた私の建築を見て、デザインを気に入ってくれたようです。札幌の設計事務所を3社ほど検討されていて、各社のプランを比較検討された結果、選んでいただきました。

堀部

まさにそうだと思います。


堀部

私が建築を勉強し始めた時、北海道では断熱性・気密性を追求して「寒さをどう凌ぐか」がテーマでした。ただ大学を卒業する頃にはそれは「当たり前」となっていました。断熱性を追求するがゆえに、北海道の住宅はましかくな、外壁の面積を最小限にするデザインばかりになっていました。

堀部

そうですね、外気に触れる面積が大きいほど、熱は逃げてしまいます。窓も熱が逃げやすいので、できるだけ小さくする、と。
そのような住宅で、寒さは凌げるかもしれないですが、果たしてその住宅での暮らしは「豊か」であると言えるだろうか、という疑問が生まれました。
その時に、北方建築総合研究所から、南向きの窓からは熱が逃げるけれども、直射日光が入ることによって暖房にかかる費用が軽減される、という論文が発表されました。
北海道の住宅には窓をつけたらダメ、という固定観念があったのですが、方角や日当たりにによっては窓をつけてもマイナスにならない、というのに衝撃を受けました。
きちんと知識を身につけることで、外界への開放感と、冬の快適性を両立した家を作ることができる、という想いがあって、独立しました。

堀部

そうですね、あると思います。今はもうテーマが変わってきていて、暖かくて結露しないのは当たり前、その次に、どのように北海道らしい面白い住宅を作れるか、ということを考え始めている方もいらっしゃると思います。

そうですね、「ただ器をつくる」だけでは面白くないと思っています。逆にハウスメーカーさんは、デメリットやリスクを最小限にするために、効率を追求することが多いように思います。

堀部

逆にハウスメーカーさんは社会にそれを求められていますよね。私たちは特殊かもしれません(笑)

堀部

この家(堀部さんのご自宅でインタビューをしています。)もガラス張りですけど、長期優良住宅の断熱性能などを全てクリアしています。ちょうど昼間の日光が入ってきています。断熱性・快適性を確保した上で、いかに面白い、豊かな住宅をつくれるか、というのを意識しながらやっていますね。

堀部

そうですね、まあ原文を読むことはあまりないですが、話題になるもの、メディアに取り上げられるものもあるので、できるだけ最新の情報は取り入れています。


堀部

ちょっと難しい(笑)思いついたら後ほど。

堀部

古いから、という理由で止めることはあまりないです。ただ、機能面だけを追求する、というのはしないようにしています。断熱性・気密性など、数値で出せるものは、ハウスメーカーさんだと根拠として使えるものですが、私はそれよりも大事なものとして、「豊かさ」を重視しています。曖昧な言葉ですけど(笑)

堀部

そうなんですけど、大事にしたい。数字には表せないし、個人差もあります。その個人差、お客様によって正解が違う、というのが住宅の面白いところだとも思っています。この人はこれが面白い、快適、豊か。また、設計者が同じでも、建てる人が変わればまた異なる豊かさを表現する家ができたりする。建築は、設計者が一人だけでつくるのではなく、使う人と一緒につくる作品です。初めの頃は自分のつくりたいようにつくれないもどかしさもありましたが、今となっては毎回違うものができあがるところに面白さ、豊かさを感じています。

堀部

そうですね、できるだけ使いたいと考えています。木材は北海道産のもの、函館の方の道南杉を使ったり、下地材にも北海道産の木材を使うことが多いです。あとは仕上げ材に札幌軟石を使ったりもします。この建物のアプローチにも使っています。軽くて加工しやすいので外壁に使われたりしていましたが、値段が上がってしまって(笑)雰囲気はいいので、できるだけ使いたいと思っています。予算との兼ね合いもありますが、お客様にも提案しています。


堀部

きめ細やかな管理をしていただけるのがありがたいです。
一般的な材料で一般的なつくりであれば、標準設計という規格のようなものに則ってできるので、あまり考える必要はないのですが、特徴的な建物を設計したときに、細かい部分の収まりがどうなるか、というところまで、非常に多くのことを考える必要があります。
工務店さんによっては勝手に進めていってしまうところもあるのですが、嶋さんは設計事務所との経験も豊富なので、前もって問題になりそうな部分の打ち合わせを提案してくれたり、細かいことを気にしてくれました。
おかげさまで現場に行く回数も少なくでき(笑)札幌在住なので、十勝の現場には咄嗟に駆けつけることが難しいこともありますが、嶋さんとは全く妥協することなく仕事ができました。
札幌以外の工務店さんには設計事務所と仕事をした経験が少ないところも多いので、細やかな仕事をしてくれる嶋さんはとても頼りになります。

堀部

小中高と野球をやっていました。勉強もせず(笑)

昔はあまり勉強との両立も求められませんでしたよね(笑)

堀部

そうなんですよ。高校も野球の特待生で入りました。私の高校のピッチャーとショートの選手はプロに行きました。

堀部

そうですね、そこそこ。ただ、そういうプロに行くようなチームメイトを見て、自分はそこまでのレベルではないな、とも思いました。独立リーグに行ったり、野球で就職するような仲間もたくさんいましたが、自分はそこまででもないなと。野球は高校でスパッとやめて、大学からは建築の勉強に全てシフトしました。そこからはスポーツにはほとんど触れず、建築に打ち込んでいたんですが、息子が野球を始めて、まさかのコーチに就任してしまいました(笑)最近のプライベートはもっぱら息子の野球に付き合っています。

堀部

自分が厳しい練習をするわけでもないので、久しぶりにやったら楽しいですね(笑)

息子さんには堀部さんが野球を勧めたんですか?

堀部

いえ、自分から。もともとサッカーも好きでやりたいといっていたんですが、いつの間にか野球をしたい、と。色々なチームに体験に行って、気に入ったところを見つけたようです。この(自宅のすぐ下にある)野球場のチームではなく、少し遠くのチームなんですが(笑)

堀部

息子が気に入ったところで頑張ってくれるのが一番かな、とは思います。

昔は小学校ごとにチームがあって、そこに入らないといけませんでしたよね。今はクラブチームみたいな感じなんですね。

堀部

そうですね。クラブチーム3〜4チームから選ぶような形でした。


堀部

技術的なことを追求するよりも、機械に頼りたくない、という思いがあります。国は、太陽光パネルや熱交換器といった機械を使う方向に進めて行こうとしています。国がいうところの、エコな商品に補助金を出します、といった仕組みです。私としては、そういった機会が増えれば増えるほど、荷物が増えてしまうようなイメージがあります。太陽光パネルも最初の導入時には補助金が出ますが、20年後の設備更新時には結構な額のお金が必要になります。一度機械ありきの生活が始まると、ずっと背負い続けなければいけない。私としては、機械は最小限で、できるだけ身軽に、建築の構成や造りで問題を緩和・クリアできるようなものをつくりたい、と考えています。

堀部

おお、すごいですね。面白いですね。

堀部

建築、家は30年も40年も使い続けるものなので、その期間ずっと機械という重荷を背負い続けることに違和感があります。
もちろん、お客様の要望であれば太陽光パネルをつけたりもしますが、個人的にはできるだけ身軽に、問題はできるだけ建築で解決したい、と思っています。この家もまさにそうで、この空間はエアコンついていないんですが、空気が吹き抜けを通じて3階まで移動できるようになっています。
私の通う大学で、環境工学の教授からアドバイスもいただきました。
温めたい時、冷やしたい時、それぞれにカーテンをうまく使うことで、できるだけ機械に頼らず、空気の対流で快適に過ごせるようになっています。

堀部

難しい計算は教授にしていただいたりもしますが、考え方はシンプルです。暖かい空気は上に、冷たい空気は下に移動する。

仕事への考え方について聞くことができていい機会でした。人となりを理解して、というよりは、依頼者を通じて一緒に仕事をさせていただいていたので、改めて堀部さんを知る、いいきっかけになったかなと思います。本日はありがとうございました。

堀部

なかなかこういう話はできないですよね。現場では「あの収めどうします?」とかになっちゃいますよね。

堀部さんに設計して欲しいけど、どう進めていけばいいかわからない、という方もいらっしゃると思うんですが、そんな時はこうしたらより豊かですよ、みたいな提案をするんですか?

堀部

どんどん提案していきます。
逆に、どうしたらいいっていうのをわかっている人はあまりいません。
住まいについて突き詰めて考えている人は、実は少ない。
猿払村に住む漁師のお客様で、「コーヒーが飲める、寒いスペース」がほしいということで、中庭をつくりたいという要望を受けたことがありました。
でも、冬の積雪がかなり多い地域で、漁師という職業上、夏は休みなし、冬はほぼ休み、というサイクルからすると、雪に埋もれる中庭でどのくらい豊かになれるだろうか、と。
であれば、あえて断熱性能を下げた、でもリビングとひとつづきにもできる、中庭風の内部空間であれば、より豊かに使えるスペースになるのではないか、と提案しました。結果的に気に入っていただき、その案で進めることになりました。もちろん、お客様の希望が最優先なので、提案が通らなければ中庭をつくっていましたが、私がいいと思ったものを提案して、納得いただけたから、ご一緒させていただくことができたと思っています。

堀部

そうですね。専門家として、いろいろな建物を見て、建築について日々考えているので、自信を持って提案させていただいています。

そこにご自身のやりたいことも含めて。

堀部

そうですね。

堀部

それが実はあまりありません。紹介ベースよりは、自分で探して見つけてきてくれた方が、よりファンになっていただいています。そういう方の方がより自分の住まいに対して強い思いを持っているケースが多い。雑誌やホームページで見つけてきてくださる方がほとんどですね。

結構ありそうな気がしたんですが、そうでもないんですね。

堀部

もしかしたら自分のクセが強いからかも(笑)独立して7年目なので、これから増えて来るかもしれませんね。


まとめ

育っていく家、というコンセプトに通じる考え方と感じました。機械に頼りすぎず、しかし快適性も犠牲にしない。数字だけのコストパフォーマンスを追求するのではなく、いかに「豊か」な生活を送ることができるか。堀部さんの建築に対する思いを知ることができました。