アインビルド代表 嶋さん

アインビルド株式会社代表、嶋 大輔社長のインタビュー。社長のかたわら現場管理人として現場に立つ嶋さんは、当初は建築設計士になりたいと思っていました。

地元、十勝で生まれ育つ。

私は十勝で生まれて、十勝で育ちました。今もここで仕事、家庭を築いています。

昔からずっと建築だけに熱を注いでいたわけではありません。学生時代は野球部員で、もともとは体育会系だったんです。それでも、親が建設関係に勤めていたり、新築の実家を建てたこともあり、子どもの頃から建築は身近にあるものでした。また、昔からものづくりが好きだったんです。夏休みの自由研究などで椅子を作ったりぬいぐるみを作ったり、工作するのが大好きでした。

そして、将来はなんとなく建築を仕事にするのかなと思い、高校は建築を学べる学校に進学したいと考えていました。しかし、続けてきた野球もあって、推薦で帯広農業高校に進学することにしました。

本当は建築設計士になりたかった。

野球部員として高校に進学するも、怪我が原因で野球は一年目でやめてしまうんです。これまでは野球部員として必死だったのですが、これをきっかけに長い将来のことを考えるようになりました。そして、やっぱり建築を学びたいなと。高校では農業土木科だったのですが、本格的な建築学、特にデザイン設計を学びたいなと思ったんです。

そして、札幌近郊にある建築の専門学校へ進学することにしました。その専門学校には一度社会経験を踏んでから入学した方もたくさんいました。私からすれば年齢はもちろん社会人としても先輩なので、負けてられないなと思ったんです。本格的に建築を勉強し出したのはここからですね。

本当は建築設計士になりたかったんです。それでも建築設計だけで活躍するのは本当に難しいという現実を知りました。それでも必死に勉強したつもりだったのですが、担任の先生からは、「まずは現場を知ってから設計の道に進むのはどうだろうか」というアドバイスを受け、地元の建設会社の現場管理に就くことしました。

人と関わる楽しさを知る。

設計の道は当時はまだ諦めていなかったのですが、同時に現場管理の仕事が楽しいと感じました。私の仕事は工程表(建設スケジュール表)を立てて職人さんに指示したり、時には設計図面通りにいかないことがあるので職人さんの指示や情報共有する施工図を書いたり、現場工事の写真を撮ったりしていました。現場には職人さんをはじめ、さまざまな人と関わる機会があったんです。現場にはみんなで一つのものを一緒に作り上げていく感覚がありました。実際に建物が完成した時は、達成感と喜びに満ち溢れていましたね。

また、休憩の合間に職人さんと話す機会がたくさんありました。また、当時現場では下っ端だった私は一服の前に、職人さんのための缶コーヒーを買い行ったりもしていました。この人はブラックコーヒーが好きなのか、それとも昨日はそういう気分だっただけなのか。日々過ごしていると、彼らの好みや人柄がだんだんわかるようになってきたんです。根本的に人に嫌われたくないという思考が、この人が喜ぶことはなんだろうという気遣いに働いたのかもしれません。すると、だんだん現場の人たちと仲良くなってゆき、現場にいることが楽しくなりました。こうして独立するときには設計よりも現場メインでやった方が自分に合っていると感じました。

あの時に比べれば大丈夫だと思える。

もちろん大変なこともありました。初めて一人で現場を任される機会があったんです。

当時資格がなかった私は、主任技術者が私の下について仕事することになりました。初めて任される仕事と責任感の重みにソワソワしていた私は、主任技術者の先輩の言葉でスイッチが入ったんです。発注者へ提供する書類作成、工事工程写真、基本一人でこなすんだと。何もできない私でも、寝ないで頑張れば乗り越えられるんじゃないか。作業時間を増やすこと、それしか思いつかなかったんです。その当時は1ヶ月くらいほとんど寝ないで仕事していました。人って寝なければ乗り越えられるものもあるんだなと当時実感しました。あの頃は若かったですね。(笑)

一度そういう辛い経験を乗り越えられたら、今後どんなに辛いことがあってもあの時に比べれば大丈夫と思える。そうすれば人って柔らかくなるんじゃないかなって思うんです。あの時の辛い経験があれば頑張ろうと思える。お酒の限界がわかれば、美味しく飲めるみたいにね。

独立、アインビルドが誕生。

もともと公共事業の現場管理がメインの会社に勤めていました。しかし、誰のために作っているのかエンドユーザーが見えにくいというのもあって、個人住宅の現場管理の会社に転職しました。

また、前職でも責任感のある仕事ができたのですが、今まで築いてきた職人さんや設計屋さんとの繋がりもあり、あとは案件獲得のための営業だけできれば、仕事が成り立つとのではないかと思いました。

あと、子どもができたんです。
前職のままではプライベートの時間が確保しづらいと思いました。生まれてくる子どもに向かって、お父さんは楽しい仕事をしているんだぞと、胸を張って言いたくて。そこで恐る恐る妻に独立の意向を伝えたところ、「(独立)すると思っていた。」と言われ、拍子抜けた覚えがあります。独立には責任も伴いますが、それ以上に自分が楽しめると思ったんです。

私たちの夢。

今の現状では、アインビルドにお願いしたいというよりも、嶋さんにお願いしたいと依頼を受けています。経営者として、これからは私自身を中心に仕事を回すのではなく、会社としての成長を考えていかなければいけないなと思いました。

建築楽しいなという若い人を増やしていきたいですね。また、そういうイベントも考えています。事務所の隣にモデルハウスを立てて、モデルハウスと自宅兼事務所を比較検討できるようにします。それをみてカッコいいところやコスト面、気になったところを見つけて欲しいです。こんな小さいイベントでも、建築に関心のある人もない人もイベントがきっかけとなり、若い人が増えていけば建築の業界が盛り上がっていくのではないかなと。もちろん、建築に情熱のある若い人を採用したいと思いもあります。それでも、別に当社じゃなくても構わない。建築の楽しさを伝えていくことで、一人でも建築業に携わる人が増えていったらいいなと思っています。